私は涙もろくて、こらえきれず、もらい泣き、ということがよくあるのですが(TVを観ていても、しょっちゅう、ぐすっ、と、きてしまいます)、なかなか、<医者としての立場での涙>には、難しいものがあります。
研修医の頃に、患者さんの最期の時に、患者さんを囲んで泣かれる家族をみて、<こんなにも慕われ、りっぱな人生だったんだな、ご家族さんも寂しいだろうし、もっと、患者さんにしてあげたこともあっただろうな>と思うと、こらえきれず、涙がつつぅーっと、流れてしまったわけですが、後で、先輩に、すっごい叱られて、へこんだことがあります。
医者は動揺をみせるな、毅然としていろ。
あとは、下手にとられると、<なんか、先生、ミスして後悔の涙なんじゃ?>と思われるぞ。
ということでした。
その話を母にしますと
<そんなことないわよ、一緒に泣いてくれる先生の方が、どれほど、温かい気持ちになって寄り添ってもらった気持ちになるか・・・あなたは間違ってないわよ>
と、励ましてくれました。
いつも、診察室で、患者さんの話を聞きながら、もう、うるうる泣きそうな場面はいっぱいあるのですが、時には先輩の言葉を思い出し、時には母の言葉を思い出し、もう、泣いてしまった時には仕方がない、と思っています。
でも、患者さんの反応は、母のいっていた方が多いですね。
固かった患者さんの表情が、一気に柔らかく、先生と同化していくのを感じることが多いです。
やっぱり、かかりつけ医に一番必要なのは、人情 ですね。